「お伊勢マルシェ」 -OISEMarche- 日出づる宮・お伊勢道中

海と人を繋ぎ、いのちを紡ぐ。

先人の知恵と経験。そして、新時代が可能にした技と心。その両方を併せ持ち、魚食の医力をいまふたたび食卓へ届けたい。

美し国(うましのくに)伊勢で、いのちを紡ぐ、ということ。

魚食の医力と食育

 生産者の枠を超え、伝達者、育成者となるために、私たちはまず、“魚食の医力”と、“食育”を見直すことから始めました。
 現在、日本では300種類を超える魚が流通し、日本人の健康的な食生活を支えています。例えば、伊勢の海でも水揚げ高が多い魚介類を見てみると、サバからは脳の発達促進や認知症予防などが期待されるDHAが、また、ヒオウギガイには動脈硬化や心疾患を予防するアミノ酸の一種タウリンが多く含まれることが分かっています。
 そんな先人たちの知恵に育まれた医力豊かな魚食文化を、家庭の台所にやさしく身近な存在とするため、現代が可能にした、新しい知恵や技術を採り入れて、人間を形成する“食育”の場を作るべく生まれたのが「お伊勢マルシェ」です。
食の神様に誓い、鮮魚はもちろん伊勢の地魚をふんだんに使ったお総菜やお寿司などを提供し、台所と身体にやさしい魚食で、海と人を繋げます。私たち漁師が目指す未来に、みなさまの健康が共にあることを願って。

日本人に陰る魚食の医力。

魚食を知らない子どもが親となる次代への警鐘。

 海に囲まれた日本では古くから漁業が発達し、人々の暮らしを支えてきました。祝い事の席に尾頭付きの鯛が供されるといった、豊かな魚食文化が息づく一方、近年は青魚の栄養素が注目を集めるなど、魚食の「医力」も見直されています。
 しかし今、日本の漁業、魚食は危機を迎えています。厳しい家計状況の中で食費に占める水産物の割合は年々減少。魚食を知らない子どもが親となり、魚離れはますます進む傾向にあります。また漁師の後継者不足も深刻化し、ますます進む傾向にあります。また漁師の後継者不足も深刻化しています。
 かつては、地域で獲れた旬の魚を、地域で消費するのが当たり前でしたが、低価格な輸入品の増加などにより、旬や地域性は失われつつあります。
 日本は資源に乏しい国と言われますが、世界に誇る漁業資源があります。あらためて今、貴重な資源を育て、活かす時が来ているのです。

健康を担う責任感。

距離を空けてしまった魚食をもっとやさしく、身近な存在に。

 時代とともに漁業の形態は変化しながらも、漁師の根底に流れる信条は変わっていません。それは、海からの恵みに感謝し、その恵みを人々に届けること。そして、未来のために海を育てることです。
 近年、残念ながら海と人との絆は薄まり、家庭にとって魚食が遠い存在になりつつあります。たとえば魚の調理についても、30代の既婚女性のうち、自分で魚をおろすことが「ほとんどない」もしくは「全くない」と答えた割合が70%近くに上り、その理由には、「おろし方がわからない」「後片付けが面倒」「料理が面倒」「魚の匂いを残したくない」などが上位に並びました。
 海からの恵みによって“人は海に育てられた”ということを忘れている人も少なくないかもしれません。今、漁師である私たちができることは、健やかな暮らしを担う責任感をあらためて胸に抱き、海と人を繋ぐこと。人々と距離を空けてしまった魚食を、もっとやさしく、身近な存在にするために、私たちはこれまでの「生産者」の枠を超え、消費者に直接、海の恵みを届ける「伝達者」となります。
 そして消費者からいただいた恵みは海に還し、明日の海を育てる「育成者」となります。描いているのは、海と人々が再び繋がる未来。心まで満たされる、本当の「美し国」です。

三重の海と最短で繋がり、鮮度の良い魚貝を届ける。それが食の神、伊勢神宮は外宮、豊受大神へ誓った、私たちの正直な食づくりの心。

伊勢神宮 外宮 豊受大神への奉納。

伊勢神宮は外宮のご祭神である豊受大神は、食と産業を司る神様として知られ、全国から様々な逸品が奉納されています。私たちも、水揚げの方法や鮮度にこだわった出荷を神様に誓い、海の幸を奉納いたしました。そして、神様とともに自らにも誓います。これまでもこれからも、海の恵みに感謝し、海を育ててゆくことを。

海から戴き、海へ還す。漁師の心を継ぐためのあくなき挑戦。

志島漁師塾の使命。漁業のすばらしさを次代に伝えるべく漁業実習などを通し、漁師としての生きる覚悟はもちろん地域、漁業のルールを学び、漁業で生きていく術を学んでいる。

 志摩市、南伊勢町、大紀町、紀北町及び尾鷲市にわたる三重外湾漁業協同組合では、持続可能な水産業の維持発展を目指して、様々な取り組みを行っています。
 その中で志島地区では、漁師を目指す若者を受け入れ、独り立ちできるまで育成・支援。塾では漁師が講師となり、さらに親代わりとして、技術指導はもちろん、住居探しなどの生活面もサポート。修行を終えた塾生は共同漁業権の取得も可能であり、後継者不足の解消にもつなげています。

海と人を繋ぎ、いのちを紡ぐ。

海と健康のあいだに。

 日本は国土面積の12倍もの広大な排他的経済水域を持ち、その面積は世界第6位の規模。伊勢湾と熊野灘に面する三重県も、全国で水産業が盛んな県の一つ。
 そんな、地域文化や経済の発展を支えてきた伊勢の漁業が、現在危機にさらされています。また、家庭内の食事においても、生鮮の食材から料理を作る割合が低下し、惣菜や加工食品を購入してそのまま食べたり、加工食品を短時間調理で食べる傾向が顕著になり、生鮮食品の中でも魚介類の減少が際立っています。また、若い世代で目立っていた魚離れは拡大しており、加齢に応じて魚介類の摂取量が増える傾向も、最近10年間では見られなくなりました。
 日本は世界トップの長寿国であり、魚食を中心とした脂肪摂取量の少なさも長寿の理由の一つに挙げられています。魚介類にはビタミンや必須ミネラルなどの栄養素が豊富であり、動脈硬化や高血圧予防も期待できる高度不飽和脂肪酸DHAやEPA、タウリンなど多様な機能性成分が含まれています。魚食は、世界的には需要が拡大しているにも関わらず、日本は自国の持つ「宝」に気付いていないのです。
 低価格志向と簡便化志向を尊重した結果、魚食本来が持つ魅力は失われ、増大する輸入水産物は、食卓から「旬」と「地域性」を無くしました。私たちが強く願うのは、もう一度、母なる海と人を繋ぎ、いのちと健康を紡ぐこと。安心で安全、健康の増進にも寄与する地場の魚を、おいしい時においしいまま提供したい。そして漁師が生き生きと仕事に取り組める環境を整備することで、後継者不足も解消され、漁場にも新しいいのちが宿ることでしょう。小さな一歩かもしれませんが、魚食文化を守るために欠かせない一歩です。

時代を超えて、海と健康のあいだに。